東京高等裁判所 平成9年(く)81号 決定
請求人 三橋智樹
〔抄 録〕
そこで検討するに、関係記録によれば、請求人は、植野副知事が公務員職権濫用罪を犯したので告訴する旨記載した、平成八年七月一一日付け「告訴状」と題する書面を東京地方検察庁検察官あてに郵送したが、同庁検察官は、同月一二日に同庁に届いた右書面につき、申告された事実は明らかに罪とならないものであると認めて、同月一七日、右書面を不受理の扱いとしたことが明らかである。請求人が右書面に記載した告訴事実は、請求人が前記のように主張する事実関係を前提に、同副知事が請求人のした行政不服審査法七条による異議申立を却下する旨の決定をしたというものであり、請求人は、同副知事の行ったことが、請求人の請願権の行使を侵害する行為であって、公務員職権濫用罪に該当すると主張しているのである。しかしながら、請求人が右書面に記載した事実関係を前提としても、同副知事が、請求人のした本件異議申立につき、これを却下する決定をしたことが、公務員職権濫用罪を構成する余地のないことは明らかである。すなわち、請求人が東京地方検察庁検察官に郵送した右書面には、何ら犯罪事実の申告がないというほかないのである。そうすると、同庁検察官が、請求人から郵送して来た右書面につき、実質的に告訴を内容とする書面に当たらないとして、これを不受理の扱いとしたことが違法であるということはできない。したがって、本件においては、付審判の請求の前提となる告訴(告発)が存在しないから、本件請求は不適法というほかない。なお、検察官が告訴状につき不受理の扱いとしたことが、刑訴法二六二条一項にいう「公訴を提起しない処分」を行ったとみられる場合があるとしても、本件において、請求人が申告したという事実は、右のとおり、犯罪を構成する事実ではないのであるから、請求人の郵送した「告訴状」と題する書面を受理しないという扱いをしたことが、「公訴を提起しない処分」に当たるかどうか検討するまでもなく、本件付審判請求は棄却を免れないというほかない。
(松本時夫 服部悟 高橋徹)